ヴェルデ温泉, アリゾナ州

これほど奇妙で、美しい温泉を私は見たことがありません。

1920年代創業の風変わりなホテルが遥か昔に焼失し、その廃墟はかつてヌーディストの楽園として知られ、それは今日でもさして変わりありません。

そこへの道中で、私は愛車を失うことになりました。

ヴェルデ温泉までの道のり

正しい道を知れば、ヴェルデ温泉にたどり着くのは難しくありません。

スタート地点は、アリゾナ観光の拠点として有名なセドナにほど近い、キャンプ・ヴェルデという田舎町です。

グランド・キャニオン、アンテロープ・キャニオン、ホースシューベンドといった観光スポットの数々は、ヴェルデ温泉の前では大量消費型の色あせたものに見えるかもしれません。

Fossil Creek Permit Area

キャンプ・ヴェルデからハイウェイ260号線を12kmほど南東へ向かい、Fossil Creek Roadという未舗装道を右折します。

ここでレンジャー(自然保護官)に停車させられます。

この先のフォッシル・クリーク自然保護区へ進入するには、許可証を事前購入する必要があるためです。

幸い、ヴェルデ温泉は自然保護区をかすめるような位置にあるので、許可は不要です。

レンジャーに温泉へ行きたい旨を伝えれば、通してもらえます。

Dirt Road

そこからダート道を約30km南下するため、最低地上高の高いトラックかSUVが必須ですが、道なりなので難しくはないでしょう。

一方、州都フェニックスからGoogleマップに従って進めば、私が車を全損したように、100%の確率で悲劇が待っています。

後述のとおり、ヴェルデ温泉へは川を歩いて、あるいは泳いで渡るルートを選ばねばなりません。

Googleがおすすめする温泉直結のルート(Dugas Road)は、想像を絶する悪路なのです。

Take a Hike 1

ヴェルデ川沿いまで峡谷を降下したところがChilds Dispersed Camping Areaという無料のキャンプ場。

くみ取り式トイレ以外のサービスは存在せず、キャンプ上級者向けです。

Take a Hike 2

車を降り、ヴェルデ川を上流方向へ4kmほど歩きます。

温泉は川の対岸にありますが、キャンプ場周辺は水深が深く流れも速いので、かぎ状に迂回する形です。

Verde River 1

氾濫原にあったと思われる散策路は鉄砲水で完全に消失していました。

さて、安全に対岸へ渡れそうなポイントに到着しました。

Verde River 2

最も水量の少ない場合でも太ももまで川に浸かる必要があります。

増水すれば即危険な水深なので、数日前までの天候を下調べしたうえで、危ないと思ったら引き返す勇気も必要です。

奇妙にも美しい空間

Overview

狂騒の20年代に創業し、1962年に焼失した温泉ホテルの廃墟がここにあります。

宿泊施設は撤去されているものの、土台部分と浴室周辺は奇跡的に残存しています。

River View

ヴェルデ川を眼下に望む数メートル高い段丘に位置し、素晴らしい眺望。

最も手前の岩盤に洞窟が掘られ、湯が流出しています。

Cavern 1

内部を探ってみると、かつて浴槽があったと思われる窪みを見つけましたが、入浴できません。

最深部には源泉があると思われますが、真っ暗なので調査は断念。

Cavern 2

洞窟の横には、大きな露天風呂があります。

泉温は37℃のぬるめで、無味無臭。

Outdoor Pool 1

残り二つの浴槽とは使用源泉が異なるようです。

意外なことに水深が2m以上あり、大人が立ち湯をしても足が底に届きません。

Outdoor Pool 2

浴槽の底は自然の岩盤になっていて、その隙間から大きな気泡が昇ってきます。

足元湧出の温泉ということを意味しています。

Small Tub

カラフルな湯屋の奥には、一人サイズの最も小さい浴槽があります。

いよいよ、歴史的なグラフィティ(落書き)の数々で彩られた空間に入ります。

Indoor Pool 1

四人サイズの浴槽が一つ。

座った時にちょうど良い深さがあります。

Indoor Pool 4

入浴のルールはClothing Optional。

かつてそうであったように、今日でもヌーディストが集う楽園ですが、水着を着用しても構いません。

Water Outlet 1

木か女体を模したグラフィティの陰部に位置する湯口からは、炭酸の泡付きと共に源泉がかけ流されています。

源泉は甘い香りを伴う金気臭を発し、泉温40℃。

Water Outlet 2

湯屋の壁は温泉ホテル当時のものですが、天井は失われています。

日中はアリゾナの直射日光を遮るものがないので、日差しが傾く朝夕の方が快適に入浴できそうです。

Indoor Pool 2

排水口は水面にあるほか、浴槽の底にもあり、そちらは普段ボウリングのピンで封されています。

この構造により清掃時には湯を抜くことができるため、浴槽内は清潔に保たれています。

Indoor Pool 3

一度目は己の準備不足で愛車を失い、長らく失意の底にありましたが、ようやく気持ちの整理がつき、二度目の挑戦で、色鮮やかな楽園に辿り着きました。

その感動は、筆舌に尽くしがたいものがあります。

Verde Hot Springs, トント国立森林公園, アリゾナ州, アメリカ
評価[4/5]
日帰り入浴
宿泊不可 (野営は可能)
公式サイトなし

コメント

  1. 匿名さん
    ここまで酷いのは珍しいですが、アメリカの野湯への道は悪路であることがほとんどです。そのため通れる/通れないの線引きが難しく、冷静な判断ができませんでした。知られざる温泉に潜む知られざる危険を知っていただき、私財をなげうった甲斐がありました…

  2. 匿名 より:

    物凄い道ですね…普通の車高では通れない岩場や、最後には川渡りですか、、これをRoad と呼んでいいのだろうか… 大変でしたね。仮に下調べしていてもレネゲードなら行ける!と思って実際行けていたかもしれませんが不運も重なってしまったことと思います。取り敢えずご無事で何よりです。とても参考になりました。行く機会があってもこの道は使いません!wアメリカ在住なのでアメリカネタはとても為になります。

  3. 匿名さん
    こんにちは。Verde温泉へとつながるDugas Roadのクレイジーさ加減が分かる動画を拾ったので紹介します。
    https://www.youtube.com/watch?v=Z2djIS4KlTg
    アメリカの湯巡りではGoogleマップを信用してはならないと分かっていたのに、大失敗したのは一年ほど昔の話です。ほとんどの野湯は携帯の圏外にあり、調べ直そうにも数時間かけて元来た道を引き返す覚悟が必要。休日の限られた時間で事前準備を怠り、徐々に悪路と化す道中に不安を覚えながら突進。ジープ・レネゲードの、バーストしない触れ込みのランフラットタイヤがバースト。救助を求めようにも携帯が使えず、人通りも無いのでやむなく自走。ようやく電波をキャッチしたところで車から発煙して終了。オフロードのため高額料金に同意してレッカー車を呼んだものの、呼んだレッカー車がまさかのバースト。悪夢のような一日となりましたが、今ではお金で買えないモノをお金で買ったと思うことにしています。何かの参考になれば…

  4. 匿名 より:

    廃車エピソードも知りたいです、、

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