温泉の宝庫ともいうべきコロラド州の中でも、パゴサ温泉は群を抜いています。
その強烈な泉質は、地球史上最大の火山活動の恩恵といっても過言ではありません。
ラ・ガリータ・カルデラ
2800万年前に噴火したラ・ガリータ・カルデラは、火山爆発指数(VEI)でレベル8に値し、地球史上最大級の大噴火であったといわれています。
Photo by John Fowler - Wheeler Geologic Area (2017) / CC BY 2.0
そのエネルギーは6550万年前に恐竜が絶滅するきっかけとなったといわれる隕石衝突に匹敵し、現在でもただならぬ痕跡が残っています。
世界で最も深い温泉
火山活動の熱源は今でも周辺の地下水を温め続けているようです。
ラ・ガリータ・カルデラから南方へ2時間のドライブで、辺りに硫化水素臭が漂ってきます。
温泉街の名前、パゴサ・スプリングの「パゴサ」とは、アメリカ・インディアンのユート族の言葉で、硫黄を含む水を意味します。
ザ・スプリングス・リゾート&スパはこの町を代表するホテル兼日帰り入浴施設です。
日帰り入浴は26ドルから53ドルまで、入場可能なエリアなどによって様々なプランがありますが、今回は併設のホテルに宿泊し、その特典として心行くまで湯浴みを楽しみたいと思います。
何しろ、デンバー空港から車で5時間、アルバカーキ空港から3時間半の僻地にあり、気軽には行けないのです。
宿泊料金は最もグレードの低い部屋でも一泊240ドルしました。
ベッドルームはちょっときれいなモーテルといった風情で、日帰り入浴料金込みとはいえ、割高な印象。
まず見ておきたいのがホテル裏手に位置する源泉池です。
青い湯がぐつぐつと煮えたぎる源泉は直径11メートルほど、深さは305メートルあり、物理的に計測可能なものでは世界で最も深い温泉としてギネス世界記録に登録されています。
珠玉の浴槽群
62℃で湧出するこの泉源を中心に、様々な湯が23もの露天風呂あるいはプールに配湯されています。
温浴エリアは全て屋外にあり水着着用必須。
敷地内のマップには、各浴槽内の温度が随時書き換えられて表示されます。
敷地の中央付近に巨大なモニュメントのように鎮座しているのが、温泉成分が凝固した石灰華ドームです。
白煙を上げる頂上付近から温泉が自噴しています。
ドームに最も近い浴槽、Overlookは44℃の熱めです。
ここからは敷地の全景を眺めることができます。
ドームから流れ落ちた湯はGolden Pondという池に注がれ、そこに鯉が泳いでいます。
池は遊泳禁止ですが、真ん中に橋が架けられています。
この橋は、水面下に少しだけ沈んでいます。


池を渡ってたどり着く浴槽がThe Cliffsで、温度は40℃。
温泉成分の堆積物できた崖下にあり、野湯のようなワイルドさを楽しめます。
湯は無色透明ですが、消しゴムのカス状の湯の花が大量に舞っています。
庭園風の敷地からサンファン川を見下ろす浴槽、Boulderもなかなか魅力的です。
温度は38℃のぬる湯で、うっすらと白濁しています。
川のそばにある浴槽の一つ、Paradiseは44℃の熱め。
強い硫化水素臭を伴い、塩素消毒の嫌な臭いはありません。
リラクゼーション・テラス
最も高い日帰り入浴料金を払った客と宿泊客は、18歳以上であればリラクゼーション・テラスという特別エリアにも出入りできます。
その中にある5つの浴槽は特に濃いにごり湯になっています。
例えばこちらの浴槽は、Cozy Cove。
39℃で長湯できますが、含有成分が多く湯あたりしやすいため、定期的に川風に当たって涼むのがよいでしょう。
42℃で適温の浴槽、River Bendでは白濁の湯がサンファン川に向かってインフィニティ・プールのごとく流れ落ちています。
さて、数ある浴槽の中で私が最も感動したのは、特別エリアの湯ではありません。
川原にせり出している岩風呂、The Burg。
灰色に濁った温泉は、川の底から自噴している足元湧出式で、アブラ臭を伴って他と明らかに泉質が異なります。
50℃近いあつ湯にはほとんど一瞬しか入浴できませんが、地球史上最大の火山噴火の残熱だと思ってありがたく浸かりました。