鎌倉時代、1320年頃創業の西屋。
白布温泉では数軒の小規模旅館が、毎分1,400リットルといわれる豊富な湯量の源泉を分け合っています。
かやぶきの宿
かつて白布温泉では、老舗旅館の東屋、中屋、西屋のかやぶきの宿が三軒並んでいるのが名物だったそうですが、2000年の大火に遭い西屋だけが焼け残りました。
築200年の母屋は堂々たる風情。
そのすぐ左手に、火元であった中屋の跡地があります。
中屋は別館で営業、延焼した東屋は元の場所で再建されていますが、消防法の制約のためかやぶきが残っているのは西屋のみとなっています。
日帰り入浴の受付時間は11:45~15:30と短いですが、分かりやすい看板が出されているのはありがたい。
古めかしさが一周回って、モダンな感じすら受ける空間。
思わずカメラを向けたくなる、共有スペースの様子です。
季節柄、凍結防止のためではないと思われますが、流しには源泉が常時流されていました。
三か所に存在する自噴する源泉が混合され、泉温は60℃弱。
そう、ここの湯は熱いのです。
温泉の大洪水や~
まず、浴室へのアプローチが素晴らしい。
中庭に向かってあふれ出る湯の上が廊下になっていて、さながら小川を渡っているかのよう。
木のぬくもりが感じられる脱衣室。
浴室は男女別の内風呂がそれぞれ一つ。
内部にはカランすら存在しない伝統的な構造なので、図解による注意書きがあります。
ドドド……!
地鳴りのような湯滝の音が、浴室を支配しています。


江戸時代の1700年頃に御影石を切り出して作られたという浴槽。
その縁の全方位から、湯が洪水のように流れ去っています。
洗身、洗髪はこの湯をすくって行います。
奥にある切石の枡には、激アツの源泉が注がれています。
源泉は入浴中に桶の中で冷まして、「上がり湯」として利用するのが推奨されていますが、そのためだけにしては枡が大きいような……
さて、浴槽への湯の投入はほぼ100%、湯滝からのものです。
しぶきが飛ぶので、湯滝は背の高い仕切りで囲われています。
それでも狭苦しい感じがないのは、開放感のある上屋の構造のためでしょう。
打たせ湯は3本。
3メートルほどの高さから、豪快に掛け流されています。
源泉は、沢の水で既に加水された状態です。
加水のためか、あっさりとした浴感。
自分では湯加減を調整できないので、湯守の力量が試される部分です。
個人的には、風呂の共有部分に打たせ湯を設けるのは好みではありません。
他人の身体に激しく当たった湯を浴びるのは、心理的にちょっと……という感じ。
でも西屋の打たせ湯には、そんなものを超越した魅力がありました。