「遠くから来てくれるお客さんもいるけど、私はそんなに温泉が好きじゃないんだ。この年になるとね。」
冗談めかして話すご主人の言葉に、そのとき私は笑いました。
注意ポイント
青根温泉 名号館は、2019年10月に閉業しました。
時間の重み
1528年開湯の青根温泉は、伊達藩の御殿湯が設けられた由緒正しい湯治場で、玄人好みしそうな落ち着いた雰囲気があります。
とりわけ、いぶし銀の魅力を放つのが「くつろぎの宿 名号舘」です。
じゃっぽの湯に代わって2006年に閉館したままの公衆浴場、名号湯の向かいに名号館は存在します。
明治8年創業当時からの建物。
レトロなどと表現される浮ついた古さではなく、時間の重みをしのばせる本当の古さがにじみ出ています。
入ってすぐの帳場付近は、実用一辺倒で事務所のようなたたずまい。
浴室へは長い廊下をギシギシときしませながら進みます。


階段の向こうに、いかにも湯治宿らしい共同炊事場が見えます。
あっさりなのに芯がある浴感
浴室は男女別の小さな内風呂がそれぞれ一つ。
使用源泉は青根温泉で共用している混合泉で、温度の異なる6つ(または7つ)の泉源から引湯しています。
男湯と女湯は左右対称で、どちらも脱衣所から半地下へ下りる構造。
女湯の方が明らかに採光が良く、開放感があります。
ぎりぎり三人入れるぐらいの小さな浴槽に、50℃弱の熱湯が掛け流されていました。
湯もみしても冷める気配がなかったので、やむなく加水。
飲泉用のコップを完備していることからも、営業中の塩素消毒はしていないようです。
こちらは男湯。
女湯同様に脱衣所は狭く、そこから浴室を見下ろせます。
日中でも蛍光灯を着けないとちょっと暗いですが、それが包まれ感をもたらしています。
壁には温度計が掛けられています。
男湯の浴槽のタイルは複雑にくすんで、凄みすら感じさせます。
湯口付近には温泉成分が結晶していますが、湯は色透明で香りもほのかに感じる程度で、あっさりしています。
それでいてシャキッとして芯のある感覚は、熱めの湯ということだけでなく、小さな浴槽ならではの湯の新鮮さのためかもしれません。
冒頭の発言を聞いた3か月後に閉業の事実を知り、あの時のご主人の表情がありありとよみがえり、言葉が見つかりません。
2019年9月で宿泊を終了し、10月には日帰り入浴も含めて閉業とのことです。
まとめ
くつろぎの宿 名号舘【閉鎖】, 青根温泉, 川崎町, 宮城県
私の好み
- 種類日帰り、宿泊
- ルール男女別
- 塩素消毒無し
- 泉温~49.8℃