青根温泉 名号館【廃業】, 宮城県

「遠くから来てくれるお客さんもいるけど、私はそんなに温泉が好きじゃないんだ。この年になるとね。」

冗談めかして話すご主人の言葉に、そのとき私は笑いました。

時間の重み

1528年開湯の青根温泉は、伊達藩の御殿湯が設けられた由緒正しい湯治場で、玄人好みしそうな落ち着いた雰囲気があります。

とりわけ、いぶし銀の魅力を放つのが「くつろぎの宿 名号舘」です。

Exterior 1

じゃっぽの湯に代わって2006年に閉館したままの公衆浴場、名号湯の向かいに名号館は存在します。

明治8年創業当時からの建物。

レトロなどと表現される浮ついた古さではなく、時間の重みをしのばせる本当の古さがにじみ出ています。

Exterior 2

入ってすぐの帳場付近は、実用一辺倒で事務所のようなたたずまい。

浴室へは長い廊下をギシギシときしませながら進みます。

Corridor 1

こんなに気分の上がる温泉へのアプローチは滅多にありません。

階段の向こうに、いかにも湯治宿らしい共同炊事場が見えます。

Corridor 2

あっさりなのに芯がある

浴室は男女別の小さな内風呂がそれぞれ一つ。

使用源泉は青根温泉で共用している混合泉で、温度の異なる6つ(または7つ)の泉源から引湯しています。

Bathrooms

男湯と女湯は左右対称で、どちらも脱衣所から半地下へ下りる構造。

Women's Bathroom 1

女湯の方が明らかに採光が良く、開放感があります。

ぎりぎり三人入れるぐらいの小さな浴槽に、50℃弱の熱湯が掛け流されていました。

Women's Bathroom 2

湯もみしても冷める気配がなかったので、やむなく加水。

飲泉用のコップを完備していることからも、営業中の塩素消毒はしていないとみられます。

Changing Room

こちらは男湯。

女湯同様に脱衣所は狭く、そこから浴室を見下ろせます。

Men's Bathroom 1

日中でも蛍光灯を着けないとちょっと暗いですが、それが包まれ感をもたらしています。

Thermometer

壁にはCanonと書かれた温度計が掛けられています。

Men's Bathroom 2

男湯の浴槽のタイルは複雑にくすんで、凄みすら感じさせます。

Water Outlet 1

湯口付近には温泉成分が結晶していますが、湯は色透明で香りもほのかに感じる程度で、あっさりしています。

Men's Bathroom 3

それでいてシャキッとして芯のある感覚は、熱めの湯ということだけでなく、小さな浴槽ならではの湯の新鮮さのためかもしれません。

Water Outlet 2

冒頭の発言を聞いた3か月後に廃業の事実を知り、あの時のご主人の表情がありありとよみがえり、言葉が見つかりません。

2019年9月で宿泊を終了し、10月には日帰り入浴も含めて閉館とのことです。

くつろぎの宿 名号舘【廃業】, 青根温泉, 川崎町, 宮城県
私の好み[3/5]
日帰り入浴可 (10:00 – 19:00)
宿泊
公式サイトなし

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