鳴子温泉 東多賀の湯, 宮城県

白濁硫黄泉が好きです、でもpHが中性寄りならもっと好きです。

そんな言い回しの、往年のテレビCMがありました。

押しも押されもせぬ名湯を語ります。

実用本位の湯治宿

『温泉地区で西の横綱を別府とすれば東は鳴子であると思う』と言われたのは、温泉評論家の郡司勇さん。

名湯として語り尽くされた鳴子温泉を、私が殊更取り上げる意味はなさそうですが、それでも良いものは、良いということでご紹介します。

Exterior

江合(えあい)川とJR陸羽東線に挟まれた国道108号線沿いに、東多賀の湯はあります。

宿泊棟は、新しめのアパートのような実用本位の外観。

Signboard

すぐ隣に位置するのが西多賀旅館です。

至近距離ながら、西多賀旅館ではエメラルドグリーンの全く異なる様相の湯が湧きます。

Entrance

それが鳴子温泉が『東の横綱』と称される理由の一つ。

東多賀の湯の、飾らない雰囲気の玄関付近。

Corridor

宿泊客のための部屋は全8室、全て二階にあります。

食事付きのプランもありますが、基本的には自炊しながら長期滞在するための湯治宿です。

Guest Room 1

そのため、部屋には流し台のスペースがあって、女将さんにお願いすればプロパンガスのコンロを持ってきてもらえます。

Guest Room 2

共用の炊事場には食器、調理器具、ロースター、電子レンジ、洗濯機、乾燥機、掃除機などがそろっていて、住むように泊まることができます。

Shared Kitchen

刺激が少なく滑らかな白濁硫黄泉

一階の突き当りに二重のガラス戸があって、その奥に男女別の浴室があります。

ここまで来るとアブラ臭を伴う硫化水素臭がむんむんと香ってきます。

Bathrooms

浴室は内風呂のみ、浴槽は各々一つだけと、俳句のように無駄のない構成です。

照明は脱衣所にあって、ガラス越しに内部を照らしています。

Changing Room

これは、高濃度の硫化水素が原因で、電化製品がすぐ腐植してしまうためと思われます。

名湯の誉れ高い温泉宿の多くは同じ問題に悩まされ、経営を圧迫する一因になっています。

Men's Bath 1

男湯の扉を開けるとそこには、改装されてまだ板材の新しさがうかがえるウッディーな浴室。

そして、息を呑むような灰白色のにごり湯。

Men's Bath 3

水面付近には、湯口とは異なる穴がいくつも並んでいます。

これは硫化水素中毒を防止するための通風孔で、空気より重い硫化水素を浴室の下部に滞留させないための工夫です。

Men's Bath 2

このため、内風呂ながら半露天風呂並みの風通しの良さを感じます。

あれ?湯の供給が止まりました。

Water Stopped

加水せずに湯温を調整するために、浴槽への投入量を自動的に調整しているのです。

この機構のおかげで、湧出点で49℃の源泉が、浴槽内では42℃程度の極上の湯加減に維持されていました。

浴室内にシャワーやカランなんてものはありません。

上がり湯専用の湯口があって、そこから源泉を少し冷ましたものが常時かけ流されています。

Water Outlet

こちらは女湯の様子。

実のところ、こういった見た目の白濁硫黄泉は東北では珍しくありません。

Women's Bath

それらの温泉は火山ガス成分が水溶した酸性泉であることが多く、肌への刺激が強く、湯あたりしやすい特徴も併せ持ちます。

一方、東多賀の湯はpH値6.3の中性(2018年分析書より/温泉法に基づく区分)ですので、安心して入れます。

濃厚な成分を秘めながら、薄衣を纏うような滑らかな肌触り…

やはり良いものは、良い。

東多賀の湯, 鳴子温泉, 大崎市, 宮城県
私の好み[5/5]
日帰り入浴可 (10:00 – 15:00)
宿泊可 (Web予約可)
公式サイトあり

コメント

  1. pHについてツイッターでご意見をいただいたので補足します。

    化学的には7.0が中性。
    家庭用品品質表示法では6.0以上8.0以下が中性。
    温泉法では6.0以上7.5未満が中性。

    化学的に中性の純水がpH7.0なのは25℃付近だけで、温度によって変化する。

    温泉の性質を定量的に表現するのは難しく、
    仮にできたとしても一定のルールに基づいて理解されないと意味が無いので、
    五感を信じて定性的な表現に留める方がよいのもしれませんね

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