盤石温泉 盤石山荘

道南の山間にひっそりと建つ無人の温浴施設には、おもてなしの心があります。

粗末な湯小屋が、本当のおもてなしとは何かを教えてくれます。

未舗装路の先に

日本で唯一、太平洋と日本海の両方に面している北海道八雲町。

この町は函館市と室蘭市の中間に位置しており、ドライブの途中でそろそろ休憩したいときに立ち寄りたいのが、盤石(ばんじゃく)山荘です。

Signboard

道央自動車道を降り、名高い温泉旅館「上の湯温泉 銀婚湯」方面への道道67号線の途中で、盤石山荘の看板を目印に右手のダート道に進入します。

普通車でも問題ありませんが不安をかきたてられる車一台分の道幅の小道を進むこと500m、右手に駐車スペースが現れます。

Bridge

小さな浴槽が一つだけの混浴の内風呂なので、先客の車が止まっていれば待った方がよいでしょう。

木橋の向こうに湯小屋が見えているので、そこから迷うことはありません。

Back

一見、農作業小屋のような質素な外観に、温泉マニアなら興奮し、そうでもなければ尻込みすることでしょう。

正面に回って全体を眺めてみると、手作り感いっぱいながらきちんとした構造をしていることが分かります。

Front

右側の浴室は天井付近が大きく開け放たれ、温浴施設で重要な換気が考慮されています。

これが不十分だと、蒸れるばかりか温泉ガスが充満して危険です。

そして開放部分には虫除けの網が張られています。

おもてなしの心

Changing Room

中に入ると、常連客のタオルがぶらさがって生活感あふれる空間に、ライトな温泉ファンならひるんでしまうかもしれません。

お世辞にもきれいな場所とはいえませんが、窓が大きく取られて明るい雰囲気なのが救いです。

Door of Bathroom

浴室の扉を開けると、二人サイズの石積みの浴槽の表面に、温泉成分がコッテリと析出しています。

うっすらと笹濁りの湯は金気臭を伴い、口に含むと適度な塩味が効いています。

Hot Tub

泉温は浴槽内で43℃ほどで、熱過ぎずぬる過ぎず最高の湯加減。

塩ビのパイプから注がれる源泉は湯口付近で炭酸成分がはじけ、鮮度の高さがうかがえます。

浴槽のサイズを考えると十分な湯の投入があり、浴槽内は清潔に保たれています。

Water Outlet1

さびたトタンの壁の下に目を向ければアブの死骸が転がり、華美とか洗練といった言葉は全く似合いません。

しかし、その荒んだ空間を、自分が訪れる前より少しでもきれいにして立ち去りたいと自然に思わせる最高の温泉が、最高の状態で供されています。

Water Outlet2

脱衣所には、「歓喜」と記された小箱が設けられています。

入浴料金は無料ですが、湯小屋の維持管理のために寄付を募る箱ということでしょう。

その表現の何とつつましいことでしょうか。

Donation

私はこのあばら屋こそが、真のおもてなしを体現していると思います。

最高のサービスを提供しているのだから、満足させて当たり前だというおごりがホストにあれば、決して気持ちのよい空間にはなりません。

逆に、自分は客なのだから、最高のサービスを受けて当たり前だというおごりがゲストにあれば、いつまでたっても満たされることはありません。

招く側と招かれる側が一体となって創り上げる深い境地が、本当のおもてなしです。

それは茶道の世界でいう「主客一体」に他なりません。

※この湯小屋は、函館市で人気の焼肉屋「梁山泊」のオーナー様の厚意で一般に開放されているものと聞いています。

盤石山荘, 盤石温泉, 八雲町, 北海道
評価[4/5]
日帰り入浴可 (24時間)
宿泊不可
公式サイトなし

コメント

  1. ムクさん
    とはいえ主客一体の精神を保つのは難しいものです。

  2. ムクさん より:

    すばらしいです。その通りだと思います。m(-/-)m

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