豊富温泉(ニュー温泉閣ホテル、ふれあいセンター)

日本の伝統文化、湯治は過去のものではありません。

日本最北端にほど近い豊富(とよとみ)温泉では、温泉利用料の税控除が認められるばかりか、湯治目的で移住する子供の就学支援(小中高校・大学)が行われ、町を挙げての取り組みには目を見張るものがあります。


ニュー温泉閣ホテル

1978年に稚内で温泉が掘削されるまで日本最北の温泉であった豊富温泉ですが、非常に訪れにくい場所であることは今日でも変わりようがありません。

札幌から高速バス「特急はぼろ号」で片道5時間。

そんな辺境の温泉が、アトピー性皮膚炎・乾癬に悩む患者の聖地として脚光を浴びています。

New Onsenkaku Hotel - Exterior

今回、湯治ではなく観光目的で当地を訪れた私は、宿泊先にニュー温泉閣ホテルを選びました。

素泊まり一泊5500円。

長期間滞留して療養する本格的な湯治には少々高く思える値段設定で、そうした需要には豊富町の運営する宿泊所「湯快宿」などが受け皿になっているようです。

New Onsenkaku Hotel - Front Desk

ニュー温泉閣ホテルは後に訪れる「ふれあいセンター」と同じ源泉を引湯していますが、入浴客が比較的少ないため落ち着いて湯浴みを楽しむことができます。

浴室は男女別の内風呂が一つずつあるのみ。

New Onsenkaku Hotel - Bathroom

L字型の大きな浴槽には、湧出点で約32℃の源泉が加温された結果44℃程度で投入されています(循環なし)。

浴槽内の湯は湯口から離れるにつれて徐々に冷めますが、それでも熱めの温度設定といってよいでしょう。

New Onsenkaku Hotel - Moss Green

1926年に石を試掘している最中に、天然ガスとともに湧き出た豊富温泉には、原が含まれます。

それがヌルヌルとした浴感と、強烈なアブラ臭の理由です。

湯口に顔を近づけると、卒倒しそうなほどの刺激臭を発しています。

New Onsenkaku Hotel - Water Outlet

分や塩分だけでなく多様な成分が溶け込んでモスグリーンに濁った湯には強い発汗作用があり、じっくりと長湯するには向きません。

これほどパワフルな泉質であれば、もう少しぬるめの温度で楽しみたいというのは贅沢な願いでしょうか。

ニュー温泉閣ホテル, 豊富温泉, 豊富町, 北海道
評価[4/5]
日帰り入浴可 (11:00 – 22:00)
宿泊
公式サイトあり

豊富温泉ふれあいセンター

ホテルの東隣には、豊富鉱山という天然ガス採掘プラントがあります。

2011年、その運営会社が不採算を理由に撤退。

温泉街で使い切れない量の天然ガスは、従来大気中に放出されていました。

しかし、施設が町に譲渡されてからはコジェネレーションシステムが導入され、温泉水をくみ上げるための電力発電に加え、その過程で発する熱で温泉を加温し、効率的な資源活用が成されています。

Natural Gas Plant

天然ガスとともに温泉が湧出しており、このプラントが豊富温泉の心臓部といって過言ではありません。

プラントの南隣に位置するのが、ふれあいセンターです。

入浴設備のない宿泊所で連泊する湯治客は、ふれあいセンターの濃厚な湯を求めて1ヶ月単位で定期券を購入し、通い詰めます。

Fureai Center - Exterior

男女別の浴室はそれぞれ「一般浴場」と「湯治用」に分かれており、どちらも内風呂です。

入館料金を払えば、規則上はどちらも利用できることになっています。

こちらが一般浴場。

Fureai Center - Normal Bathroom

十分に素晴らしい湯ですが、同じ泉質・湯使いということを考えれば、ニュー温泉閣の内風呂の方が静かにくつろげる印象を受けます。

さて、温泉ファンなら当然、「湯治用」に心ひかれるところです。

そちらは石成分がろ過されておらず、皮膚に刺激が少なくなるように加温が控えめです。

Fureai Center - Therapeutic Bathroom (Warm)

Photo by 豊富温泉 ミライの湯治

浴槽は凄まじい様相を呈しています。

湯口の周りに巡らされているのはオイルフェンスで、その内側には濃厚な原が溜まっています。

注意したいのが、時間帯によってほとんど別の温泉と言ってよいほど状態が異なります。

ベタベタ、ギトギトの湯が見られるのは、基本的には開館8時半からの1時間程度。

それ以外の時間に訪れて「噂ほどでもない」と思って帰るのはもったいないのです。

Fureai Center - Therapeutic Bathroom (Tepid)

もう一つの浴槽にはぬるい、にごり湯が満たされ、「水風呂ではありません」と書かれているとおり、湯使いは不明ですが源泉が使用されているようです。

オイルまみれの浴槽以上に私が驚いたのが、客層です。

次々と訪れる皮膚疾患者の中には、ボトルに詰められてボディーソープの如く無料で供される「温泉原」なる黒い液体を全身に塗り、床にじっと座って治療に専念されている方もいました。

私のような観光客が立ち入るのが申し訳なくなり早々に立ち去りましたが、豊富温泉がアトピー・乾癬に悩む湯治客にとっていかに重要なのかが分かりました。

町が先進的な施策を打ち出して、湯治を行政面から後押ししていることも背景にあるでしょう。

湯治文化を過去の遺物として展示しているアーカンソー州のホットスプリングスを訪れたばかりの私にとって、衝撃的な湯浴みとなりました。

豊富温泉ふれあいセンター, 豊富温泉, 豊富町, 北海道
評価[5/5]
日帰り入浴可 (8:30 AM – 9:00 PM)
宿泊不可
公式サイトあり

コメントを残す

Ken Springfield